この生き生きと呼吸する喜び！―― カスタム・ウィンズ木管五重奏団の凄腕5人がつくる音楽、その鮮やかなテクニックに驚嘆し続けるのはもちろん、作品にいのちを注ぐ〈呼吸〉の素晴らしさ…。軽妙も躍動も細やかに磨き抜く男たちが、百戦錬磨の表現力を〈ひとつの呼吸〉に合わせたとき、喜びの扉がふわっとひらいて聴き手を導き入れてくれるよう。その息と心を、臨場感と共に堪能させてくれるアルバムの誕生だ。
2010年結成、メンバー交代を経て2014年に新たに始動したカスタム・ウィンズの5人は、それそれが精力的な活躍で管楽器界をひっぱる人気ソリストであるとともに、オーケストラの一員として日々重責を担い、大勢の仲間たちに深く信頼される音楽家たちだ。この優れた個性たちが、心の目線を揃えて音楽を響かせ歌いあうときの凄さ…。
たとえばハイドン、シンプルゆえに音楽性が裸にされるこの作品からあたたかく響いてくる、こまやかな心くばり。ダンツィでもその精緻な表現が、一音一音の明快さもそのままに美しい歌（なんと絶妙なフレーズ感！）と陰翳豊かな響きへ生きてゆく。音楽がふと場面転換するように表情を変えるときの自然に耳を惹きつける表現は、ファルカシュの軽妙と躍動にはもちろん、ミヨーの傑作《ルネ王の暖炉》から愉しい豊穣を引き出してほんとうに見事だ。さらに、吹奏楽界で大人気の八木澤教司が彼らのために書き下ろした新作の、技量と表現力を生き生きと拡げて愉しい音楽…。
時も場所も軽やかに越えるヴァラエティに富んだ選曲で、しかし視界澄んで温かいアンサンブルの心地良い個性が続一感とともに耳を満たしてくれる。柔らかい躍動感とクリアな豊穣、乱れなくしかし自在に踊る多彩！　心爽やかな音の旅を繰り返し体験できるアルバムの登場、笑顔と拍手でお迎えしよう。山野雄大