LOVER ALBUM リマスター

LOVER ALBUM リマスター

浮遊感が心地よい作品なのですが、それだけでなくドラムが作り出すリズムや間が最も印象的で、伊藤氏を中心としたアンサンブルが紡ぎ出す音の増幅感が音楽を濃くしています。全体も様々なジャンルが上手く纏まり、創造的な音の残響がまだ脳の奥でさざめき続け、最後まで大波と小波が緩やかに寄せては返すようなトリップ感もありました。

先ず「PRAYER」のカバー手法から凄いなと思いました。矢野顕子自身もそのカバー手法が有名で(『ピヤノアキコ。~the best of solo piano songs~ (SACD-Hybrid)』)、曲の徹底的な分解と斬新な再構築を見せるのですがクラムボンのカバー世界もそれに似て、単に洋服を着替えるのでなく、原曲の核心と行間を理解、抽出し、それを彼ら独特の奥行きある宇宙へ誘うカバー構成をみせてくれるのです。あのパット・メセニーと矢野が生んだ、満ちてゆく透明さに原田氏の声のアプローチも抜群です。

ソフトマシンの原曲はフュージョン的な神秘性を持ち、そのサイケデリックさが今作へ見事にフィットします。「外出中」は原曲のリズムを、ピアノからファンクに。ドラムが特にカッコイイ。「波よせて」は原田氏の柔らかさが“うぇいばー”という響きをより良い味にします。

ここから2曲はビートルズ『アンソロジー』要素でデモ音源のようなもの。聞かせるより歌が生れる空気を伝え、「サマーヌード」も「アクロス~」も歌の素朴味と雑音交じりの緩さが逆に作品に味を作ります。他方「ナイトクルージング」はそれまでの浮遊感を継ぎ質感は原曲よりもっとアンビエントです。宇宙が部屋を飲み込んでゆく音は印象的。

「以心電信」はYMO楽曲からか音作りに気合を感じます。「カルアミルク」は秀逸で、バンクバンドのカバーと違うポストロック的な虚無感が漂い、その空気は「おだやかな暮らし」へも。この2曲は聴き所です。TheBandはカントリーやフォーク色が強く、リヴォンの嗄れた声を永積崇が独特な風情で表します。(By うたずき)

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